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若手社員には、まず「トレードオフ」の視点を教育すべき。割り切ることができない社員は必ず潰れる。

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若手職員はすぐに辞める

ストレス社会を反映して、労働安全衛生法が改正されました。
それにより、平成27年12月から、従業員50人以上の事業所には、ストレスチェックが義務化されました。 
また、新入社員の早期離職も問題視されています。
新入社員が3年以内に離職する割合は、高卒で5割、短大卒で4割、四大卒で3割と、非常に高い数字となっています。
企業と社員、互いにリクルートに大きなコストを掛けたにも関わらず、2~3人に1人は、3年以内に仕事を辞めてしまうのです。

 

 離職理由には、「労働条件」「人間関係」「仕事内容」などが挙げられます。
これらは、いずれもよく耳にする退職理由です。
また、離職理由は1つだけでないという人も多いでしょう。
 
若手社員の早期離職は、各企業にとって頭の痛い問題です。
そこで、早期離職を回避するために、メンタルケアやキャリアパスの構築といった対策をおこなっています。
メンタルケアについては、冒頭お示しした通りです。
キャリアパスとは、職位の道筋を立てて示すことでモチベーションを刺激することを言います。 
 
しかし、私はこれらの対策にどれほどの効果があるか疑問です。
私は、本気で若手社員の早期離職を回避したいのであれば、入職時から「トレードオフ」の視点を教育すべきだと考えています。
そうすることで、若手社員の早期離職率低下を実現するとともに、特にメンタルケアにかけるコストを抑えることができます。
 
 
 

専門職のジレンマ

刑事ドラマの1シーンです。
殺人犯の張り込み中に、目の前でスリが発生しました。
しかし、この場でスリを捕まえると、殺人犯が警察の張り込みに気づいてしまいます。
 
困っている人たちを助けるために刑事になった主人公が職務を全うするには、どちらを優先するのが正しいのでしょうか。
殺人犯の張り込みを継続するのか、それとも目の前にいるスリを捕まえるか。
 
私は、こういった状況を「専門職のジレンマ」と呼んでいます。
刑事という専門職であるがゆえに、目の前で発生したスリを黙殺して、殺人犯の張り込みを優先させなければならない。
困っている人を救う仕事に就いているがゆえに、困っている人を救うことができない現実。
 
専門職のジレンマとはつまり、トレードオフのことなのです。 

 

 

トレードオフ

トレードオフをご存知ですか?
トレードオフとは、 一方を追求すれば他方を犠牲にせざるを得ないという状態のことを言います。
いわゆる、「あちらを立てればこちらが立たず」です。

先ほど紹介した刑事ドラマの1シーンも、まさにトレードオフの状態です。

 
 
次は、ある医師のケースです。
震災によって自宅が崩壊、妻が大けがをして継続した治療が必要な状態です。
この状況で医師は、「専門職のジレンマ」に陥ります。
目の前で一番大切な妻が怪我をしている。しかし医師として、震災で怪我をした人たちを治療しなければならない。
医師であるがゆえに、一番大切な人を治療できないなんて、何のために医師になったのか。
こちらも、トレードオフの状態です。
 
「刑事ドラマ」「震災時の医師」と極端な例を示しました。
しかし、我々の生活も実はトレードオフに溢れているのです。
特にビジネスシーンはトレードオフの連続で成立しているようなものです。
その中には、正しいかどうか判断できない状況下で選択しなければならないケースも多々あります。
 
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mataleao.hateblo.jp 

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本当の退職理由は何か?

 私は立場上、会社を辞めていく若手職員と話をする機会がよくあります。
話をする中で、離職理由として多いのはやはり、「労働条件」「人間関係」「仕事内容」といったところです。
しかし私は、どうしてもこれらが本当の離職理由のようには思えません。
勿論、全くの嘘ではないと思います。
ただ、「労働条件」「人間関係」「仕事内容」といった不満因子はありながらも、それらが決定的な理由ではなく、そもそも自分自身が離職理由を整理できていないのではないかと感じるのです。
 
そして、これらの職員には共通点があります。
皆に共通して言えるのは、トレードオフの視点を持ち合わせていないということです。
入職してから離職するまで、あるいは物心ついてから今まで、数え切れないほどトレードオフの状態を経験しているはずです。
しかし、トレードオフの視点を持ち合わせていないので、自覚がないのです。
そのため、行き当たりばったりの取捨選択を繰り返し、余計なストレスを生み意欲低下に繋がり、離職するのです。
 

トレードオフを教育したら

小さな不満因子が積み重なり、それらを解決できないまま会社が嫌になって辞める。
そして退職理由は、鉄板の「労働条件」「人間関係」「仕事内容」。
誰もが納得するし、自分自身も納得できる理由です。
ただ本当は、明確な離職理由を自分自身も掴めていない。
 
このような、トレードオフの視点を持っていない若手社員に、トレードオフの視点を教育すればどうなるでしょう。
 
労働条件については、例えば「残業」と「プライベート」はトレードオフの関係です。
残業が続いてプライベートを浸食されることがストレスとなり、モチベーションが低下する。よくあるパターンです。
 
しかし、一歩引いた視点で、「残業」と「プライベート」を天秤にかけている自分を見つめることができれば、考え方は変わるでしょう。
「今はプライベートを犠牲にして仕事をとる」と主体的に考えられるだけでも、気持ちは大きく違います。
 
また、職場の人間関係では、「協調」と「主張」はトレードオフの関係です。
自分のやりたい仕事を犠牲にして周囲との協調を優先させることで、モチベーションが低下する。これもよくあるパターンです。
 
しかし、トレードオフの視点で「協調」と「主張」天秤かけると考え方は変わります。
「今回は協調を犠牲にして自分を主張しよう」「今回は周囲と強調する方が良い仕事になりそうだから、自分の主張は抑えよう」というように考えれば、少なくとも職場の人間関係に振り回されて、やりたい仕事ができないといった感覚は解消するはずです。
 
そして、仕事内容についても然りです。
 
トレードオフの視点に立ち、「やらされている」ではなく「自ら選択してやっている」という主体的な考えになることで、モチベーションをキープすることができるのです。
 

トレードオフの解消 

また、トレードオフの視点を持っていると、トレードオフを解消する方向へ思考を発展させることができます。
どちらかを犠牲にするのではなく、両立できる手段を建設的に探るようになるのです。
この思考は、「AとBを天秤にかけている」という自覚がなければ成立しません。
 
トレードオフを解消する思考になると、例えば刑事ドラマのケースでは、犯人の特徴を把握しておいて後から捜査することもできますし、別の刑事に依頼することもできます。
何も自分がやらなければならない理由はありません。
スリを逮捕できたら誰がやっても同じです。
刑事ドラマの主人公は、トレードオフの視点がないため、視野狭窄に陥っていたのです。
 
また、医師のケースでは、自分が治療を担当する病院へ妻を入院させたり、あるいは妻が入院している病院で治療を担当するといったトレードオフの解消法があります。
こちらについても、トレードオフの視点がないために視野狭窄に陥っていたのです。
 
このように、トレードオフの視点を持つと、視野を押し広げることができます。
OJTでも構いません。若手職員に、常にトレードオフを意識させることで「割り切り力」が養われるのです。
 
そして、割り切り力によって、自分軸と会社軸のどちらに比重をかけたら良いかを客観的に評価できるようになります。
結果、悩みの袋小路に入り込む回数が減少します。
すると仕事へのモチベーションはキープされ、「潰れない若手職員」となり早期離職を防ぐことができます。