コンプライアンスという名の「バカ基準」が組織をダメにする
コンプライアンスとは
「コンプライアンス」という言葉を叫ぶ声が、日に日に大きくなっています。
「コンプライアンス的にイケるの?」「コンプライアンスはどうなってるんだ!!」など、世間にもすっかり浸透しています。
コンプライアンスとは、そもそもどういう意味でしょうか。
コンプライアンス(compliance)
法令遵守:特に、企業がルールに従って、公正・公平に業務を遂行すること。
※法令以外の倫理なども含まれる。
耐震偽装、粉飾決算、食品偽装など、企業のコンプライアンスに関わるニュースが毎日のように報道されています。
これらのルール違反については、まさに「コンプライアンス」の問題であると言えます。
しかし、「※法令以外の倫理なども含まれる」という部分についてはどうでしょうか。これを「コンプライアンス」と表現してしまったばかりに、コンプライアンスは思わぬ方向へ転がって、社会を窮屈にしています。
ブラックコンプライアンス
ところで、「法令以外の倫理等」とは一体何でしょうか。
基準が、非常に主観的で曖昧です。
私は、これを「ブラックコンプライアンス」と呼んでいます。
「それコンプライアンスに関わる問題だぞ!!」って言った方が勝ちになるケースは、だいたいブラックコンプライアンスに当てはまります。
現代社会は、「一億総評論家時代」「一億総ツッコミ時代」です。
右を向いても左を向いても他人に厳しい言葉ばかり。
これらの言葉に「愛」はありません。
自分のことは棚に上げて他人を叩くのです。
そんな人間達が、ブラックコンプライアンスという武器を手にするとやっかいです。
「ブラックコンプライアンス(法令以外の倫理等)」が、「コンプライアンス(法令遵守)」を飲み込んで、一人歩きをはじめました。
その結果、企業は本来のコンプライアンスではなく、法令とは関係ないブラックコンプライアンスにばかりに目を向けるようになったのです。
このような「ブラックコンプライアンス(法令以外の倫理等)」には、別の呼び方があります。
それは、「バカ基準」です。
バカ基準とは
バカ基準とは、「最低のバカであっても失敗しないように定められた基準」のことです。
振り込み詐欺に引っ掛かるような情弱高齢者に対して、銀行ATMの金額制限をおこなったことを揶揄する言葉として、「バカ基準」が生まれたようです。
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コンビニのポイントカードの件も、「カードを出し忘れてポイントがもらえなければクレームを付けるようなバカ」が、ポイントカードを出し忘れないように定められた基準です。
運動会の徒競走を一緒にゴールするのもバカ基準です。
ジャポニカ学習帳から、気持ち悪いという理由で昆虫の写真が消えるのもそう。
騒音に配慮して盆踊りを中止するのもそう。
言葉狩りや言葉の自主規制なんて完全にそう。
「バカ基準」というフレームに当てはめれば、こういった例は枚挙にいとまがありません。
ブラックコンプライアンスの事例
「バカ基準」が「ブラックコンプライアンス(法令以外の倫理等)」となり、「コンプライアンス(法令遵守)」と混同されて企業をダメにしています。
休憩時間に社員が屋外で喫煙していました。
屋内禁煙なので、屋外の喫煙スペースで喫煙していたのです。
それを見かけた人が、「お前のところの社員はサボっている」とクレームを入れました。
すると企業は、「屋外でも禁煙」というルールを作りました。
これ、ブラックコンプライアンスです。
「屋外で喫煙されたら副流煙が周囲に流れてくる」といったクレームであれば、屋外でも禁煙にするのは妥当と言えます。
しかし、「サボっている」というクレームに対して、どうして屋外禁煙にする必要があるのでしょうか。
そんな基準をつくって誰が得をするのでしょうか。
ある女性社員が、プライベートで食事会をしました。
その時の写真をfacebookにアップしました。
すると、facebook を見た人から、「おまえのところの社員はサボっている」とクレームが入りました。
すると、企業はSNSの利用を禁止にしました。
これ、100%ブラックコンプライアンスです。
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企業が取り組むべきコンプライアンス
これらの事例をみても、他人に対して厳しい社会になったと感じます。
だからと言って、企業がブラックコンプライアンスに染まって良いのでしょうか。
味噌も糞も一緒にしたようなコンプライアンスに意味があるのでしょうか。
何でもルールで禁止してしまうと、職場環境は悪化の一途を辿ります。
コンプライアンスという名のバカ基準のために、本来やるべきコンプライアンスが置き去りにされてはいけません。
わりとカタい職場で金髪の社員がいました。
案の定、客から髪の色についてクレームが入りました。
あなたが社長ならどうしますか。
就業規則で「金髪禁止」にしますか。
それをやるとブラックコンプライアンスになります。
金髪にしている社員を注意指導すれば良いだけの話です。
ルールを守っていない1人の社員に対して、ルールを守らせるための新たなにルールを作る必要はありません。
就業規則で定めたとしたら、それは「最低のバカであっても失敗しないように定められた基準」になってしまいます。
ルールを守らせるためのルールほどバカらしいものはありません。
まとめ
私たちがイメージするコンプライアンスは、企業のトップにしか関係がないようなイメージです。
実際、雲の上の出来事のようでピンときません。(格助詞3連打!)
しかし、コンプライアンスは社員一人一人が意識するものです。
トップ任せにせず、一人一人が意識すれば、ブラックコンプライアンスは生まれません。
では、コンプライアンスを意識するにはどうすれば良いのか。
就業規則を丸暗記する必要なんてありません。
全てに通用する、万能の心得を覚えておくだけで良いのです。
「あとから理由を聞かれて説明できないようなことは、はじめからやるな」
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