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「見える資質」より「見えにくい責任感」。リーダー選びを失敗しない一つの視点

 

リーダーと「責任感」 

「良いリーダー」の条件は何か。

以前、このようなテーマの記事をいくつか書いた。

 

【参考記事】 

mataleao.hateblo.jp 

mataleao.hateblo.jp

 

 

「良いリーダー」の条件は何か。
もっとも支持される意見は「責任感」だろう。


リーダーにはさまざまなタイプがある。


・引っ張っていくタイプ。

・後方支援するタイプ。

・協調性を重視するタイプ。

・競争を重視するタイプなど。


どれもリーダーに必要な要素だ。

しかし、そこに「責任感」が備わっていなければ、周囲から認められるリーダーにはなれない。

 

 

責任感を放棄する社員に価値は無い

では、「責任感」とはなにか。

以前、こんな記事を読んだ。

cybozushiki.cybozu.co.jp

 

私はこの記事の内容に違和感を覚えた。

「そう言われればそうかもしれないけど。。何か違うような。。。」

 

少数意見や愚痴からでも良質なアイデアが抽出できることがある。

それは事実だ。

しかし、「俺は失敗するってわかっていたよ」「だから言ったのに」といった発言をした彼には決定的に足りないものがある。

 

それは、「責任感」だ。

 

「責任感」を伴っていない発言は、とても軽い。

彼に「責任感」があれば、このような発言ができただろうか。

例え自分の意見が通らなかったとしても、チームの一員としてチームの方針を尊重して進まなければならない。

 

自分の失敗はチームの失敗であり、チームの失敗は自分の失敗である。

自分の成功はチームの成功であり、チームの成功は自分の成功である。

 

 

  

余談

「俺は失敗するってわかっていたよ」「だから言ったのに」などの発言は、「責任感」を備えている社員であれば、絶対に発言しないフレーズだ。

そしてこれは、「裏のリーダー」によくある特徴だ。

 

裏のリーダーに「責任感」は必要ない。

責任逃れが上手い社員ほど裏のリーダーに君臨できる。

 

そして裏のリーダーは、表の世界では責任がおよばないポジションをとる。

「表のピラミッドではリーダーのポジションに座れない」という事実が可視化されることを、裏のリーダーは嫌う。

裏側で自分が影響を与えている社員たちから、「表では大したことない」と思われるのが怖いからだ。

 

だから、敢えてピラミッドから離れる。

そして積極的な意見をするわけでもなく、じっとしている。

で、プロジェクトが失敗すれば言うのだ。

「俺は失敗するってわかていたよ」

「だから言ったのに」(裏側で発言しているだけで、表の世界では何も言っていない)

 

こういった社員対して、私はアドバイスをする。

「自分は神の視点に立ってるつもりかも知れないけど、そのポジションは妄想だから。現実を見るようにな」

 

組織には「表に出してはイケないタイプ」の社員がいる。

こういった社員を活かすには、高い技術とメンタルタフネスが要求される。

私には高い技術もメンタルタフネスも備わっていない。

「コストが高すぎて扱えない社員に対して必要以上にエネルギーをかけない」というのも管理の一つだ。

 

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承認欲求は誤解されやすい

話を「責任感」へ戻す。

 

リーダの条件として「責任感」を挙げることに異論はないだろう。

しかし、組織には様々なタイプのリーダーが必要だ。

となると、「責任感」にプラスアルファが必要となる。

 

私は、ここに一つ落とし穴があると考える。

「責任感」は見えにくいということだ。

 

「責任感」は数値化できるものでもなく、日頃の積み重ねによって周囲からなんとなく認識されるような、捉えにくい資質なのだ。

 

結果、目に見えやすい「知識」「技術」といったプラスアルファに引っ張られて、肝心の「責任感」がおざなりになってしまう。

 

 

何にでも首を突っ込みたがる社員がいる。

関西で言う「いっちょかみ(一丁噛み)」だ。

いっちょかみは褒め言葉ではない。貶し言葉だ。

 

いっちょかみは、自分の興味があることに首を突っ込まずにはいられない。
本来業務を止めてでも、気になる話しがあれば立ち止まって耳をそば立て、頃合いを見計らって口を挟むのだ。


この行動には、強い動機がある。

承認欲求だ。

しかしこれだけでは、いっちょかみのどこが悪いのかよく分からない。

 

・承認欲求が満たされればモチベーションになる。
・垣根を越えて意見を述べるのは良いことだ。

 

一見、「向上心がある社内ノマド」にも見える。

しかし、それは大きな間違いだ。

 

いっちょかみは、単に「自分はそのことについて知っている」ということを、周囲に知らしめたいだけだ。

そのため、発言には全く「責任感」が伴っていない。

自分の興味があることだけ食い散らかして、プライオリティバランス(仕事の優先順位)の視点を持たないダメ社員だ。

 

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いっちょかみの悲劇 

しかし、いっちょかみを「向上心がある社内ノマド」的に捉える上司がいるから困る。

 

こんなエピソードがあった。

 

他部署のプロジェクトの話だ。

メンバーは年配社員中心で、皆PCに弱かった。

PCに弱いメンバーの中に、少しだけPCを知っている社員が入ればヒーローになれる。

そこに目をつけたのが、いっちょかみだ。

自分の仕事の手を止め、メンバーの輪に加わってPC自慢をはじめてヒーローになった。

結果的にメンバーを助けたのだから、これはこれで善行だ。

 

悲劇はここからだ。

この件を受けて、いっちょかみをプロジェクトリーダーにしたいという依頼があった。

いっちょかみとしては、大きなチャンスだった。

しかし、PC自慢以外の働きはできず、プロジェクトは頓挫した。

 

「俺、頼まれてやっただけだから。自分がやりたかったわけじゃなし」

プロジェクトが頓挫した時に、いっちょかみから発せられた言葉だ。

 

 

「他部署の困りごとを、わざわざ自らの手を止めてまで解決してくれた」

あの時、いっちょかみがとった行動が、プロジェクトメンバーには「責任感」に映ったのだろう。

痛恨の判断ミスだ。

目に見える資質に惑わされた典型的な失敗例。

 

責任感の見抜き方

では、「責任感」を見抜くにはどうすればよいか。

 

簡単だ。「自慢しない」社員を探せばよい。

「責任感」がない社員は、自らの資質や手柄を「自慢する」。

逆を言えば、「責任感」がある社員は自らの資質や手柄を「自慢しない」のだ。

 

いっちょかみのケースで言えば、PCトラブルを解決したあと、PC知識自慢をしていたらしい。

また、プロジェクトリーダーとして出向いた時も、しばらくはPC知識自慢をしていたそうだ。

いっちょかみは、まさに低次承認欲求の塊だと言える。

そして、あのプロジェクトは、不幸にも承認欲求の捌け口にされてしまったのだ。

 

知識や経験が豊富だったとしても、それを自慢する社員はリーダーに向いていない。

知識は経験は、自慢するものではなく、組織やチーム内で伝播させるものだ。

それがリーダーとしての責任というものだ。

 

 自らの資質を自らのモノだと考えずに、組織やチームの利益として考える視点を持っている社員は、「責任感」があるリーダーになれる。

 逆に、自らの資質を周囲に認めてもらうだけで終わる社員はハズレだ。

 

 目に見えやすい資質にダマされて、ハズレを引かないように気をつけよう。